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「なんでこんなところに魔猪が居るのよぉぉぉーーっ!?」
簡単な依頼の筈だった。
孤児院出の私は、先輩冒険者と冒険者ギルドの教えに従って装備を整えるための採集クエストを受けていた。
モンスターが現れてから町の外にある薬草の収集も危険な行為となった。
故に戦闘力の低い駆け出し冒険者の装備を整えるための支度金を稼ぎ、付近にいる弱いモンスターを倒して、徐々に経験を積むのがセオリーとなっていた。
勿論、収集場所は経験豊富な冒険者により強いモンスターは狩られて適正な難易度に調整されている。
なので、比較的死ぬリスクが低い。これがこなせないのなら、冒険者としてはやっていけないと言われる程には。
……だというのに、
「ーーーーーーーッ!!!」
今自分を追いかけて来ているイノシシのモンスターは、どう考えてもこの地域にいていいモンスターではない。
女としては背の高い部類に入る自分よりも二倍以上の大きさで、中級以上の冒険者が数人で狩るレベルの強さを持っているだろう。
駆け出しの自分が距離を詰められずに逃げられているのは、【人狼】の種族特性で足が速く、それも全力で走り続けているからだ。
すぐに体力が尽きて追い付かれてしまう。そうなれば、ロクな装備もない自分はボロ雑巾より酷いことになりかねない。
「たーすーけーてぇぇぇっ!!」
大声で叫んで見たものの、周囲に人影はない。
仮に居たとしても、同じ駆け出し冒険者では被害が増えるだけである。
そう理解していても、私は必死になって助けを求めた。
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