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「他に武器は使っていなかったのですか」
「いえ、後は拳で殴って怯ませていたくらいですね」
「拳で……」
そういえばと、フェルは思い出す。
魔猪の鉄よりも固い額を殴っていたのに、その殴った手で平然と斧を振り回していた。
だとすれば、あの何かが砕ける音は一体なんだったのだろうか? よもや、魔猪の頭蓋骨を割った音だとでもいうのだろうか?
いや、そもそも突撃して勢いのついた魔猪を、拳で殴って怯ませるなんてできるものなのだろうか?
「ーー少なくともそんな見た目と闘い方を持った冒険者はこの街には登録されていませんね」
「じゃあ、冒険者では無いんでしょうか?」
「いえ、それにしては『報酬をやる』という言い回しはおかしいですね」
仮に騎士や傭兵であるならば、モンスターを狩っても報酬は出ない。何故なら彼等は既に給料や依頼料に含まれているからだ。
冒険者に比べると、国に雇われている騎士は安定収入で優れ、対人戦闘や緊急の護衛が主の傭兵は依頼の金額で優れる。
出現数にバラつきがあり、一律で決められないモンスターの報酬が出来高制の冒険者でなければ、そもそも討伐報酬を貰うという発想がでないのだ。
「じゃあ、一体……」
「あの~、すみません」
フェルの疑問を遮るように、横から声がかかった。
「まだお話に時間がかかりますか? 名代登録をしたいのですが……」
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