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少女はその表情に初めて、終末の【悲しみ】を感じ取った。
そうだ。終末はずっと、記憶を持っていたのだ。
そのことに、少女はふと気が付いた。
自分が記憶への希望を述べるたびに、自分が『早く記憶を取り戻したい』と笑うたびに、終末はどんな気分でいたのだろう。
どんな気分で、あの機械的な笑みを浮かべていたのだろう。
そんなことに、ようやく思い至った。
少女は初めて、終末を愛おしく思った。
✴︎
終末は、彼女の涙溢れる瞳を見て初めて、少女の【心からの悲しみ】を知った。
自身には記憶があった、だから自分は人間などではなく兵器に過ぎないという覚悟があった。
そうだ。少女はずっと、記憶を失くしていたのだ。
そのことに、終末はふと気が付いた。
自分が答えを先延ばしにするたびに、旅の終着点を期待させるたびに、少女はどんな気分でいたのだろう。
どんな気分で、無邪気に笑いかけてくれていたのだろう。
そして今、どれほど傷ついているだろう。
そんなことに、ようやく思い至った。
終末は初めて、少女を愛おしく思った。
✴︎
2人は目を合わせた。
互いが何を思っているのか、手に取るように知れた。
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