第一層・目醒め

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「行ってきます」 昨日の体験が忘れられず、モヤモヤとした心持ちのまま朝を迎えた結依は、あまり晴れない表情を母に心配されながら家を出た。本当はこのことを小夜に報告したくてウズウズしていたところだった。そのことを思い出すたびに、昨日触った部分が疼くような感覚がする。今日も帰ったらしてみよう。そんなことで頭がいっぱいだった。 「おはよ!」 「おはよー」  団地を出てすぐの小夜の一軒家の前で待っていると、結依はいつもより数段明るい声色で挨拶を飛ばした。その新鮮さに驚きつつ、小夜は結依のもとに駆け寄った。 「どしたの?朝から」 「昨日教えてくれた『おなにー』、やってみたんだ」 「ほんとに?」  小夜は目を丸く見開いた。 「うん……気持ち、よかったよ……」 「いいなあ、うちもやってみたけど全然で」 「ウソ!指で押したり入れたりしたら、体がフワフワってなって……」 「『入れる』……?」  瞳を輝かせながら立て板に水を流すように語る結依に、小夜は今度は訝しげな顔を向けた。 「うん、穴があって……」 「穴?」 「指入れたら、気持ちよかった」 「へー……」  そうして呆気に取られた表情。自分の発言でコロコロと変わる小夜の顔色に、結依は小さな優越感すら覚え始めていた。 「お姉ちゃんは、お豆を弄ったら気持ちよくなる、って言ってたんだけど……」 「おまめ?」 「うん。おしっこが出るところのすぐ上にあるんだって」 「お豆……」 「ユイ?」  また新しいことを聞いてしまった。この探究心にすっかり火がついた結依は、授業が終わってからの“お楽しみ”に胸を膨らませながら、ランドセルの肩紐を握り締めた。 「ごめん、やっぱり今日遊べないや」
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