また会う日まで

13/15
前へ
/252ページ
次へ
「勝手に触んな」  ……いや、勝手もなにも、これは私の身体だし。  そう反論をする前に、両手を上げた英二が素早く立ち上がる。 「いやいや、お熱いねえ。お邪魔みたいだから帰るわ。糸子、スイカちゃんと食べろよ~」  陽気な笑い声が、玄関の向こうに消えて行く。滞在時間はわずか十分。本当、なにをしに来たのだろう。スイカを二玉も置いていった迷惑野郎でしかなかったけど。  ぎしり、と鳴ったベッドのスプリングに薄目を開く。顔の横にはしなやかな左腕。思わず目を逸らしたくなるほど綺麗な顔が、間近に迫っている。 「……なにをしようとしてるの」 「キス」 「駄目に決まってるでしょ」 「なんで」 「……風邪がうつるから」 「じゃあ問題ない」  問題しかないわ。ニキビ一つないつるりとした額を鷲掴みにすれば、更に体重をかけてきた。重力が加勢している分、私の方が断然不利。加えて、こっちは病身だ。
/252ページ

最初のコメントを投稿しよう!

81人が本棚に入れています
本棚に追加