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沸騰したお湯をインスタントコーヒー粉末が入ったマグカップに入れると真奈美(まなみ)足早(あしばや)に 給湯室から立ち去ろうとした。 午後17時が過ぎ、残業が始まる前の この20分休憩時間は広告代理店に(つと)める 真奈美にとって()えがたい苦痛なのだ。 「真奈美。今日は残業するの?」 背後から声を掛けられて一瞬ビクッとすると 同時に真奈美の頭の中で試合開始を告げる ゴングが鳴った。 「やっと1週間が終わる。明日土曜日だね。 真奈美は何処か行くの?」 「うん…特に予定ないかな」 「良いな~時間ある人は余裕があって。 私はインスタにUPするのに良い店 探さないとフォロワーさん達を ガッカリさせないようにしないと」 同期である友理奈(ゆりな)の一言はやっぱり(とげ)がある まるで特別予定の無い私が暇人だと (けな)されているようだ。 「(うらや)ましわ二人とも休みを満喫出来るなんて。 私なんて今週末は出張準備で忙しくて ろくに休めないんだから」 真奈美のテンションが下がったのも束の間 背後から再び言葉のジャブが飛んできて 攻勢に出ていた友理奈が気圧(けお)された。
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