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この世界なんて、無くなっちまえばいいのに、と思う。 学校の屋上で、放課後忍び込んで煙を吐き出すなんて、まるで中学生のヤンキーのようだ、とクスリ笑う。 毎日のだるい生活の中、毎日鳴るチャイムの音、生徒たちの挨拶の掛け声。 段々と沈んでいく心を、他の奴に当たることで解消する。 それが俺の日常になっていた。 この屋上にいれば、俺と同じように虚無に食われた奴らがやってくる。俺はそれを丸ごと飲み込みたいがために、こうして屋上に座って煙草をふかしていた。 ドクターペッパーの缶に、煙草をねじ込み今日の獲物をじっと見る。 屋上の扉の、錆で軋んだばねの音が、心に響いて俺はまた笑う。 さあ、今日も俺を退屈させないでくれよ。 誰が相手になるんだ? 立ち上がり拳を握りなおす。 高鳴る胸を、隠すように俺は奥歯を噛みしめた。 「よお」 そこに立っていたのは毎日のように喧嘩をしているクラスメイト、手塚巧だった。 「なんでお前がここに…」 「またこんなとこに来てタバコ吸ってんの。チューボーかよ、お前」 高笑いする手塚に、俺は虫唾が走って唇を噛む。 「てめえ、また喧嘩売ってんのか、この俺に」 「はっ、喧嘩も糞もねーよ。お前こんなさァ、狂犬みてェにぎゃんぎゃん突っかかって、しょうがねえ奴だな」 余裕の表情を浮かべる手塚に、俺はまっすぐ見つめてガンを飛ばす。 「あらら。血の気の多いこって」 腑抜けた手塚の顔面を睨んで、舌打ちする。 この余裕の表情が嫌いだ。 俺の方が強い、そう思っているのに。 なんだか全く敵わないような、そんな気さえして俺はコイツが好きになれないでいる。 「もう戻ろうぜ、センコー呼んでるぞ」 「うるせー。てめえ、それ以上俺に付きまとうとボコボコにしてやんぜ」 「別に、いいけど、さ」 軽く手塚は掌を握り、自分の頬に軽く当てた。 「まあ、俺たちβが足掻いたって、出世できるわけじゃねーし…そんなにカリカリすんなよ。なるようになるって」 そう、俺はβ、コイツもβ。 この世界では俺たちは何にも権利がない。 いいようにαに利用され、消えていく。 そしてΩを求めても、番(つがい)になることは無いのだ。 「どけ、コラ」 「おーおーこえーの。やっと戻る気になった?」 わざと大げさにいって、手塚はおどける。 俺はわざと、肩で奴にぶつかるように歩く。それを見て、手塚はため息をついた。
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