メイストームデーに会う

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メイストームデーに会う

「ねえ、明日時間ある?」 「大丈夫だけど何かあるの?」 「うん、ちょっと……」 電話越しの彼女は明日の具体的な話をしたくないようだった。 「何かあったっけ?……」 と僕が熟考しているとそれを察したのか、彼女は 「明日が何の日かが関係してるよ。それ以上は秘密」 とだけ言っていそいそと電話を切ってしまった。 僕はスマホで5月13日が何の日なのか検索する。 出てきた画面を見た瞬間に額から冷たい汗が流れてくる。 "メイストームデー" 恋人に別れを告げるための日。 初めて知ったそのイベントはあまりにも好ましくないものだった。 次の日僕は落胆の色を隠せず彼女を待っていた。 「お待たせ〜。ごめんね。ちょっと仕事立て込んじゃって」 これから別れを切り出すには随分と楽しげな声色でやってくる。 「はい、これ」 そう言って手渡してきたのはリキュールの入った瓶だった。 彼女の地元では別れるときにギフトを贈るマナーでもあるのだろうか。 「カクテル好きだったでしょ?」 困惑する僕をよそに彼女は話し続けていた。 「何でこんなもの?……」 「あれ、カクテル嫌いだったっけ? よく飲むって言ってたから……」 彼女がショボンとしてる姿を見て状況整理に努める。 「今日はメイストームデーだよね?……」 「メイ、ストームデー?……」 あれ? 「今日はカクテルの日だからあなたが大好きなカクテルをサプライズでプレゼントしようかと思って、それで……」 どうやらとんだ思い違いをしていたようだ。 「ごめん、カクテル大好き! ありがとう!」 心の底から安堵と感謝を伝えると彼女の笑顔も戻ってきた。 「ほんとにごめんね。今日は僕の家でカクテルを空けよう」 「うん!」 笑顔の彼女を連れて僕の家へと向かう。 「あ、そうだ。後でメイストームデーが何か調べとくね!」 「いい、いいから。調べなくていい」 無邪気な彼女に不要な情報を入れないように気をつけないといけない。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 テーマ:「メイストームデー」をハッピーエンドで
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