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此処は一体、何処なのか。
はっきりしないのは、これが夢であることと、私の眼中に女の姿しか映っていないからだろう。
指から再び手の甲へ舌を這わせ、女の手をぬめりしきる。
唾液が垂れそうなほどにしゃぶり続けた後、あまりにも感じている女の手を解放し顔をじっと見つめた。
女は自分の口元へ濡れた手を持っていき、ぬめる唾液をゆっくりと舐めとった。とろりとしたその瞳を私にじっと向けたまま。
その表情はあまりにも艶やかに鮮烈に歪んでいる。
来て、早く来てと言われているようで、私は女に覆いかぶさるように衝動のまま胸元へ顔を埋めた。
その女は、確かに何処かで出会ったような気がしてならない顔であった。しかしまるで思い出せない。
思い出せないのは、これが夢であるからなのか、あまりにも女が私を扇情へ導くからなのか。
《終幕》
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