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まどろみの中でぼんやりとした心地が鮮明になると、若葉のような女が私の前に立っていた。
随分と晴れやかな表情で「行きましょう」と薄緑のワンピースを翻し、ねっとりと強引に手を絡ませて来た。
私はある期待を持って「ええ、行きましょう」と返した。
すると女は満足げに唇の端を持ち上げる。
少しだけ冷たい女性特有のその温度を持つ手の誘いに、無性に情が掻き立てられる。
擦り寄るように肩を寄せてきた女の手を振り解き、そのまま強く抱きしめてしまいたくなった。
しかし、私にはそれが叶わなかった。
ぱっと場面が切り替わったのだ。やはりこれは夢かとその時私は確信した。
残された余韻に熱いものが込み上げようとしていた。
女の手と服越しに触れた身体の感触を思い浮かべて夢想に更けようとすると瑞々しく甘い香りが鼻を擽る。
私の目には今、何も見えていない。何も映っていない。
芽生えた感覚が全身を伝たわり出した時、柔らかな感触に気付いた。
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