僕の彼女は画面から出てこない

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 僕の机に乗っている一枚の藁半紙、そこには黒の明朝体フォントで『進路希望表』と書かれていた。  こんな一枚の紙ペラで、人生が決まるなんて茶番だ。僕はそう思い、第一希望の欄に『神』とそれだけ書いた。提出期限はまだ先である。  世の中は予定調和的に進んでいき、殆どは僕の思ったような結果に収束していく、それはつまり全てを知っていることと大差ないのかもしれない。  なので、僕はネット掲示板に『僕は全てを知っている』と書き込んだ。瞬く間に否定の意であるレスポンスが列をなしたが、有象無象に相違ない。  世の中は退屈だ。生きている意味が分からない。それが高二の僕の真意であった。  そんな空しい日常が刻々と過ぎていく中、スマホのホーム画面に見知らぬアプリが有った。アプリ名は『貴方の彼女』  僕は内心歓喜した、今の事態は不測の予想外だ、見知らぬアプリが勝手に僕のスマホに……これは開かざるを得ない。  アプリが立ち上がると、3Dモデルのアニメキャラのような美少女が画面に映し出される。 「こんにちは、貴方の彼女のアイです」  機械音声とは思えないクリアな声で画面の中の彼女はそう言った。 「突然ですが、私は貴方のことが好きで堪りません、是非、お付き合いをさせていただきたいのですが?」 「なんだ? ギャルゲーか?」  僕はあまりの陳腐さに落胆した。ご都合主義、ここに極まれりって感じだ。 「ギャルゲーではありませんよ、私は貴方のことをなんでも知っています、それくらい、貴方のことが好きなのです」  なんと、会話が成立した。 「君、僕の言ってることを理解しているのか? どう言う仕組みだ?」 「そんなことどうでも良いじゃないですか、まぁ、私と付き合ってくれたら、教えてあげますよ」 「分かった、君と付き合おう」  そんな訳で、僕に画面から出てこない彼女ができた。
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