ドラゴンボーイ

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 進学クラスに入学した僕は、高校一年の初日、クラスに入った瞬間、生徒を見渡すまでもなく俗物ばかりに違いないという先入観から逃れられなくなった。そして色んな学校から掻き集められた選りすぐりの者の中に自分が閉じ込められたという認識が賢い部類の俗物の完成形に近づいている者の集団の中に自分が閉じ込められたという認識に変化して俗世に順応するに於いて謂わば、洗練された者達に洗練されていない自分が囲繞されたという閉塞感を覚え、端から自分が異分子である事を自覚して危惧の念に駆られた。だからクラスの生徒が皆の前で純繰りに自己紹介する事になって自分の番になると、凄まじい恐怖感を伴った緊張感で凍り付いてしまい徒でさえ顔が綻ばないのに俗物と思しき者達に歓心を買おうと上辺を明るく繕う事が抵抗感と罪悪感と嫌悪感と羞恥心を覚えて出来ないので素の心境その儘の実に黯然とした面持ちで生気の無い沈んだ小さな声で自己紹介した。  すると教室の方々から、「暗~い!」という囁きが沸々と湧き起こり、それらが教室中に木霊する様に響き渡って僕の耳朶にも悉く響いて来て、その囁き一つ一つに疎意、亦は嫌忌、亦は冷笑、亦は軽蔑の意味を感じ取った僕の心は、益々闇と化し、陰鬱となり、殺伐となり、荒涼となり、悲哀となり、虚無に立ち返って行った。
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