15、プーさんじゃない!

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15、プーさんじゃない!

 〈密視点〉  俺は、アホだ。  Ωにしては賢いと思っていたのに…  なんで恋人の魅力に負けて、エロっエロな台詞を言ってんだよ!  自分で自分が情けない。 「…はぁ」  目は覚めたのに、ベッドから起きられない。  だってあちこちキスマークだらけだもん。 「こんな身体で学校なんか…」  もちろん、朝のジョギングなんか行けるわけがない。  合同開催のお祭りはもう4日後なのに。  キスマーク…アザ……内出血……! 「そうだっ!!」  慌ててベッドから飛び降りて、キッチンに向かう。 「おはよう、密」 「うっ!オハヨ…」  ご機嫌な宗護をほっといて、目当ての物を準備する。  小皿に砂糖を少し入れて、水も少しだけ。  指でかき混ぜ、なるべく溶かす。  溶けたらキスマークの上から、砂糖水を塗る!  ひんやりして、でもベトベトするけど我慢我慢。  太腿や、胸やお腹にも塗っていく。  鏡を利用して、首回りも念入りに。  呆然とした顔をした宗護が近づいてきた。 「…密、いつからプーさんになっちゃったの?」 「それは蜂蜜だろ!これは砂糖水!」 「なんで塗ってるの?まさか、舐めて欲しいとか?」  ふざけんなっ  俺は真剣なのに!  エッチなプレイなわけないだろ⁉︎ 「アザに砂糖水を塗ると、治りが早いんだよ」 「へーそうなんだ」  …カッチーン…  何、その小馬鹿にした表情は? 「宗護は今、日本全国のばーちゃん子を敵に回したね」  母方祖母、直伝の技だぞ!  俺だって実際やる前までは信じてなかったけどさ。 「そっか、ごめんね。そんなおばあちゃんの知恵袋があったなんて知らなかったよ。密の手が届かないとこ、塗ってあげるよ」  カッチーンは継続中だけど、実際自分で塗れない場所があるんだから仕方ない。 「ん。やって」  もう学校は休みだな。  キスマークだらけだから休みますなんて…言えないけど。  嬉しそうに砂糖水を塗る宗護に、二人でサボってこれかよ…とかなり情けなくなった。  ☆  宗護の家のポカポカするベランダは気持ちいい。  パンツ一丁で寝そべってても寒くないから。大理石の床にマットを敷いて、俺は身体中に砂糖水を付けてまったりタイム。  ベタベタは気持ち悪いけど、我慢あるのみ。  最初に塗ってから、四時間が経った。 「密ーお茶だよー」   俺に付き合ってズル休みをした宗護が、オヤツを持って来てくれた。  視線を合わせたら、引きつった顔の宗護がいた。 「密…砂糖が乾いて白くなって…ちょっとホラーだよ?」 「砂糖だもん。そりゃ乾いたら砂糖になるじゃん」  えぇ?意外なんだけど。  いつもいつも、宗護は余裕綽々な顔しか見た事が無かった。 「アフリカの奥地の呪術師みたいになってるよ…?」  恐る恐る俺を見る宗護が可笑しくて、笑いが堪えられない! 「ぷぷっ!あははは!」  笑って笑って笑い過ぎて、声がおかしくなった頃、宗護が不機嫌そうに呟いた。 「だってさ、両親に7歳の誕生日にアフリカの部族に滞在させられて、猪を丸かじりしたり、シャーマンから祝福させられたりしたんだよ?もう、トラウマだよ」  宗護の両親に早く会いたいかも。  第一声は決まったね。 「息子さんを立派に育てて下さって、ありがとうございます!」だ。  これしかない(爆笑) 「さぁて、また砂糖水塗ろうっと。宗護、ぬりぬりしてくれる?」  わざとパンツを少し引っ張って、薄くなったキスマークがついたお尻を見せつけた。  ハハン?見たか婆ちゃんの知恵袋! 「…はぁ。ほんと、どうしちゃったんだろ。悪い子になっちゃって」 「悪い子キライ?」  宗護はいつもの余裕綽々な顔で微笑んで「じゃあ、キスマークがどれくらい消えたか確認しに、シャワーに行こ」と俺の手を取った。  いいんだもんね。  どうせアホなら、楽しんだもん勝ちなんだから!
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