第一章 イヤリング

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第一章 イヤリング

ある雨の降る日、俺、北野 霧矢は毎日のように電車で学校に登校、授業を受け、クラブもオフだったから、友達の相模 志桜里と新野 義勇とカラオケに行った。終わったのは6時半、12月の真っ只中だからもう真っ暗だ。家の最寄り駅から歩いて10分の所に俺の家はある。繁華街を抜け、ひっそりとした住宅街に入る、誰も歩いている人はいない。いつも不気味だと思いながらも歩いていた。その時、後ろから生ぬるい風が吹いてきた。後ろを振り返ったが、ただの風だ、何かあるはずもない。前を向いて帰ろうとすると、髪の長い女の人が前から歩いてきた。真冬だというのに、麦わら帽子をかぶっている。色白で正直好みだった。何事もなくすれ違ったが、手のなかに何かの感覚があった。金属なのはわかった。恐る恐る見てみると、金の輪っかが手の中にあった。イヤリング…だろうか。下にも何か落ちている。紙切れだろうか。 「なんだ?」 くしゃくしゃなので開いてみると、紙には あの子にこれを… とだけ書いてあった。これはなんなんだ? とにかく帰ろう。明日あの二人に相談しよう、幼なじみのあいつらしかこんなこと相談出来ねぇし、俺にはな。帰ると母が待っていた。 「あんた遅かったじゃない。」 「ああ、ごめん。ちょっとね。」 「そう」 適当にやり過ごすと、自分の部屋に戻ろうとしたがその時、 「ただいま!!」 妹のさゆきが帰ってきた。中学校のソフトボール部の新キャプテンに選ばれたらしく、自主トレを毎日欠かさずしている。その時、妹は怪訝な顔をして俺に尋ねてきた。 「霧矢兄、何か不思議な気配がする物持ってる?」 「え?」 さゆきは不思議な感覚を持っている。ガキの時からそうだった。親に先祖の霊がついているのがわかったらしい。こいつになら話してもいいかな。 「後で俺の部屋に来てくれないか」 「えっ…何するつもり?やっとあたしに興味が出た?」 「チゲ-よ!」 そもそも俺は志桜里のことが… 「なぁんだ、じゃあなに?」 「ちょっと相談したいことがあんだよ。」 「わかったよ、お風呂入ったら行くよ。」 「ありがとな。待ってるよ。」 「お風呂は入っといてよね。汚いのは嫌だから。」 「ストレートだな…わかったわかった。」 「そんじゃ、また後で。」 「おう。」  大好きな軟骨の唐揚げを食べ、風呂に入って、コーラを飲んでいるとさゆきがやって来た。 「そろそろ聴こうか?」 「何を?」 「自分で言ってたじゃないの。」 「ああ、そうだったな。じゃあ来てくれ。」 二人で二階の部屋に上がった。 部屋のノブを握った時、俺は致命的な事を思い出した。読んだエロ本をベッドに置きっぱなしだったのだ。いくら妹だからといって、見せたくはない!。というか妹だから見せてはいけない!見つかったらどうなるか! (霧矢兄のエッチ!!) (あたしにもこんなことさせるつもりなの!?) とか思うだろうか。いや、ないな。 あいつなら… (霧矢兄も男の子だねぇ。) (あたしがやってあげるよ) とか、あいつの事だからな。 って何を考えてんだ俺は!早く片付けなければ。俺は妹を部屋の外で待ってもらい、急いで片付けた。 「まだぁ?」 「もう少し待ってくれ。」 「はいよ。」 呆れ口調で言われた。妹に呆れられるとは、我ながら情けないな… 「入っていいぞ。」 「やっとかぁ。」 エロ本は隠した、これで大丈夫だ。 「エロ本でも隠してたんでしょ?すみに置けないなぁ~。」 「何でわかったんだよ…」 「霧矢兄だもん。」 「理由になってない…」 「で、相談したいことって何?」 俺は妹にさっき起こった事を話して、イヤリングとあの紙切れを見てもらった。いつもより興味津々だ。すると妹は顔を上げて俺に 「これやっぱり怪しい何かこもってるよ、後悔、愛、怒り…。」 「そうか…。」 「そんで、【あの子】にこれを渡して欲しいんじゃないのかな?」 「でも、誰か分からないんじゃ渡すことも出来ねぇじゃんか。」 「明日そのすれ違った場所に行ってみようよ」 「そうだな。志桜里と義勇も一緒に行ってみようか。」 そうして話を終えると、さゆきは部屋から出ていった。何かいかがわしい事でも考えてるのか、ニヤニヤしていた。 一人になった部屋であの時の事を考えていた。 あの生ぬるい風の感覚、女の人の匂い、周りから漂う不気味な空気、今に起こっているような感覚だ。 あの人は何故俺の前に現れたのか、何故俺にこれを渡す事を頼んだのか、あの子は謎は深まるばかりだ。 でもあの声、どこかで…
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