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プロローグ
10年前に死んだ父親は実は浮気をしていたらしい。
そのことが発覚したのはその浮気相手の葬儀でのことだった。浮気相手は私の小学校の頃の担任。名前は佐倉真奈美先生。私の記憶では、小学校1年生の頃の担任で可愛らしい容姿の先生だったから、生徒やほかの先生からも人気だったことをよく覚えている。
今回改めて遺影を見たが、確かに今見ても美人だと思う。
そりゃあ父だって、母より全然若い佐倉先生になびくのも理解できる。なんて、他人事みたいに思った。
佐倉真奈美さん。享年42歳。五年ほど前から乳がんを患い、一年ほど前から余命宣告を受けていたと聞いた。本来ならば、まだ若い方の葬式というものはもっと、悲しみに包まれるものだ。「まだまだこれからなのに」「まだ若いのに」。私は10年前の父の葬式を思い出しながら、周りの人が言うはずであろうセリフを頭の頭の中で並べてみる。
けれども、今回そのセリフは未だに聞いていない。
「不倫をしていた」という噂が式場に伝わっているためだ。悲しみとは別の重い空気を感じながら、私は親族席を見る。
佐倉先生のご両親はすでに他界しており、兄弟もいない先生には身近な親戚というのは存在しなかったらしい。
だから、今回の喪主は佐倉先生の娘が務めている。
彼女は13歳の女の子だった。会葬礼状にはこう名前が記されている。「喪主 佐倉 結音」。
あの子は、私の腹違いの妹になるらしい。
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