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「それでは始まります。」
ようやく始まる。
僕はテーブルに視線を向けた。
「5、4、3、2、…」
店員さんがカウントダウンする。
「1、」
後ろでブワッと熱気が、膨れ上がる。
な、なんや!?
ピィィっ!
ぐぼぇ!
笛とほぼ同時に、僕は後ろからとんでもない圧力を受けた。
目の前の商品がどんどん消えていく。
ま、待ってや!
僕は必死で後ろからの圧力に抗い、ちくわと牛乳を手に取った。
と、僕が取ったのを狙っていた隣の婆さんが僕をぎらりとにらんだ。
怖い怖い!
睨まんとって!
僕は冷や汗を流しながら、次にチョコルイト…じゃなかった、チョコレートを探した。
最初チョコレートがあった場所にはテーブルの木目が淡々と見えていた。確かにそこにあったはずのチョコレートは跡形もなく消えていた。
あの量のチョコレートがもうなくなってる?!
全部他のおばちゃんたちが取ってったっていうんか⁉︎
なくなったものはしょうがない。
僕は次に醤油を探した。
醤油はまだ数本テーブルの上に残っていた。
チョコレートと同じ目にあう前に取らないと!
僕は必死で人を避け人をすり抜け醤油に手を伸ばした。
しかしコンマ 1秒前にやっぱり他のおばちゃんにとられた。
ちくしょう、と思って狙っていた醤油をとった手の主を見ると、さっき僕を睨んでいた婆さんだった。
彼女は僕を見て口角を上げた。
い、いやらし!
「はい、セール終了です!」
店員さんの声が響いた。
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