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「おはようございます…」
約1か月の新入社員研修期間が終わり、今日から資材管理部に配属されることが決まっている。
私は、資材管理部と書かれたエリアの入り口から顔をのぞかせて、声をかけた。
中にいた女性が私に気づいて、少し笑って言った。
「おはようございます。
そんなところにいないで、中に入ってきてください」
私は「すみません」と小さな声で言って中へ入る。
緊張で声が震えているのが恥ずかしい。
もう少しきびきびと動きたいと思うのだけれど、人見知りの場所見知りで、初めての場所ではおかしいほど身体が委縮してしまう。
おずおずと女性のいるデスクに近づいていくと、その人はパソコンに何か入力していた。
「えっと、悪いけどお名前を聞かせてくれるかしら」
PCに向かったまま言われて、私は焦って「霧里和奏です、よろしくお願いします」と頭を下げた。
首から下げたIDカードに『増田梨花』と書いてある、20代後半くらいの女性はPCを操作して、「ん…?霧里さん?」と不審げに首を傾げた。
「霧里、和奏さん…
って、ああ!あの霧里さんね」
えっ…「あの」霧里さんって…なに?
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