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不安で固まる私の方を向いて、増田さんは眼鏡を外して笑いかけた。
「あのね、急に辞令が出てね、あなた資材部じゃなくて企画部に異動になったの。
まだ知らされてなかった?」
企画部?!
私は驚愕して口をパクパクさせる。
そんなの、全然聞いてない!!
増田さんは可笑しそうに目を細める。
「開発の渡部はそーとー変わってるからねえ…
私と同期なんだけど、めんどくさいやつよ。
ま、ご健闘を祈るわ」
「え、で、でも…私は研修でも…」
全体研修の後は、資材や工場のことしか教えてもらってないし。
「さあ、詳しいことが聞きたかったら、人事に問い合わせてみてくれる?
とにかく、私にも経緯は判らないし、あなたは今日から企画部に配属って言う通達しか来ていないから」
そう言うと、増田さんは私には興味を失ったように、私の後ろを見て「おはようございます」と声をかけた。
慌てて振り向くと、研修で一緒だった高岡美唯さんが立っている。
私は増田さんに「…失礼します」と声をかけて、高岡さんに軽く会釈して部屋を出た。
高岡さんが驚いたように私を見ているのが判った。
が、増田さんに声を掛けられて、慌てたように向き直る。
私は混乱したまま、でも始業時間が迫っていることもあり、急いで企画部に向かった。
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