343人が本棚に入れています
本棚に追加
「急なことで、申し訳なかったね。
さっき資材の増田から連絡もらって、まだ辞令のこと誰も霧里さんに話してなかったんだって驚いたんだよ」
と話し、私の顔を見て訝しげに言葉を切った。
「…どうした?気分でも悪いのか?
さっきもなんか、廊下で具合悪そうだったけど…」
私は首を横に振った。
「大丈夫です」
小さな声で言うと、
「そう。じゃあ、今日からここで一緒に頑張っていこう。
俺は渡部優人。
君のデスクはあの、元気な志賀くんの向かいね。
柳瀬さん、頼むね」
と、前に並ぶデスクの人たちの中の、入り口に近い方の人に声をかけた。
はい、と顔をあげた女性が柳瀬さんか。
私は課長に一礼すると、志賀くんの向かいの席に行った。
「霧里です。
よろしくお願いします」
柳瀬さんの横に立って頭を下げる。
柳瀬さんは「こちらこそ」とPCの画面を見たまま答えた。
横顔が何だか疲れて見える。
お肌も荒れ気味のような…
「あなた、個別の新人研修では資材のことしかやってなかったんでしょ。
ここの仕事内容をまとめたから、見て覚えて」
と言われて渡された紙を手に、私はお礼を言って椅子に座った。
最初のコメントを投稿しよう!