1.初日

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 『商品開発の流れ』  と題してあり、下にフローチャートのような図が記してある。  合間合間に『STEP1』とか判りやすいように振ってある。  STEPは4まであった。  私は図に見入る。  セルの1個1個に細かくそのステップでやるべきことが書かれている。  うわー…商品開発って、やることいっぱいあるんだ…    「最初は雑務からやって、開発の周辺の仕事を覚えてもらいます。  いずれはプレゼンとか渉外みたいなこともあるけど、あなた大丈夫?」  柳瀬さんに少しきつめに言われて、私は怖気づく。    大丈夫じゃ…ない。  私は紙を持ったまま唇を噛んだ。  私にこんなことできるわけない。  だから、希望して事務に入ったんだもん。  他人と丁々発止のやり取りなんて、できっこない。  うつむいて黙り込む私を見て、柳瀬さんは小さくため息をついて私に向き直る。  「初出社でいきなり異動ってかなり特殊だと思うし、希望や研修と違う部署で働けって言う方が無茶だと思う。  納得いかないなら、人事に掛け合ってみるのもアリなんじゃない?  社内コンプライアンスにかけてもらえるかも。  こちらとしてもあまりにやる気のない新人に、覚える気のない仕事を教えるのも手間なだけだから」  先ほどとは違って、幾分優しい声で諭すように話す柳瀬さんに、私は「…すみません」と頭を下げた。  言ってることは正しいけど、言い方がキツイよな~…
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