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「甘く、そして上品な血の虜になってしまったようですね」
「え?」
何を期待していたんだと恥ずかしくなり、一気に頬に熱が集まる。
私は男に背を向けると頬に手を添え熱を隠す。
そんな私の様子に気づいた男が「どうかされましたか?」と尋ねてくる。
「な、何でもないわよ。それよりも、早く出ていって」
「それはできませんね。さっきも言った通り、私は貴女の血の虜なのだから」
この日から、私とバンパイアとの共存生活が始まった。
そんなの関係ないと追い出すこともできたのだが、私にはそれが出来なかった理由がある。
その理由というのが、他の犠牲者だ。
追い出すのは構わないが「貴女のせいでいろんな人が犠牲になりますよ」と、男は私を脅した。
2回吸われてわかったが、男は加減などなく血を吸う。
こんなバンパイアを野放しにして人が死んだりなんてしたら、私のせいでもある。
勿論私に対しても血を吸うのに加減などしない。
だが男が言うには、私の血液は他の人より多く、血を吸ったところで2~3日もあれば直ぐに元通りになるらしい。
人の命と自分の血液、天秤にかけるまでもなく答えは最初から一つしかなかった。
「ええ、確かに言ったわよ、あんたがそのプリンセスというのを見つけ出すまでここにいてもいいって。でもね、これはなんとかならないわけ!?」
そう言いながら指差す先には、一際目立つ棺が置かれている。
一般家庭に棺などあるはずもなく、勿論持ってきたのはこの男。
棺の中じゃないと眠れないなんてバンパイアも不便そうだ。
「毎日毎日棺が置かれた部屋で眠る私の身にもなりなさいよね。あんた、ニンニクや十字架が置かれた部屋で寝れるわけ!?」
「はい、眠れますよ」
「あー、そうだったわね」
バンパイアが十字架やニンニクが苦手というのは、そう最初に言った人物が会ったバンパイアの苦手な物であっただけ。
実際のバンパイアも人と同じで嫌いなものは各々違うということをこの男と話して知った。
他にも、バンパイアが人の血を飲むのは、人でいうところの食事といった感じに思えるが、実際は人間と同じ食事も食べるようだ。
現に一緒に暮らすようになってから、男も同じ食事を食べている。
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