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1吸血『天使か悪魔かバンパイアだ!?』
この世には、説明できないことが存在する。
そして、今私の目の前で起きている現実も、その一つだということ――。
「初めまして、私はバンパイアです」
「いやいやいや! そんなの笑顔で言われても」
突然家の中に現れ、自分はバンパイアと名乗る男は明らかに危険。
そもそも不法侵入だ。
取り敢えず警察を呼びたいところだが、目の前に立たれては身動きができず、距離を取るので精一杯。
「兎に角出ていってもらえますか? 警察呼ぶわよ」
「お断りします」
「即答!?」
何とか隙を作ろうにも、逃げ出す隙を与えてはくれない。
その上、直球に伝えた私の言葉もあっさりと却下。
「一体何が目的なの? お金?」
「私の目的ですか?」
ニヤリと口角を上げ、男の瞳がキラリと光る。
私の脳が告げている、こいつは危険だと。
ゆっくり歩み寄ってくる男を前に、私の足は縫い付けられたように動かなくなり、ついに目の前まで近づいてくると、男の顔が近づけられた。
よく見ると、その男の肌は透き通るように美しく、瞳は深海のようにどこまでも深く青い。
きっとこの時の私の気持ちを言葉で表すのなら、目の前の男に瞳を奪われたというのが正しいのだろう。
男は私をじっと見詰めると、何かに納得したらしく顔を離し頷いている。
「貴女はバンパイアですね」
「は?」
男の言葉が理解できず、頭にハテナマークを浮かべる。
「ようやく出逢えました。運命のバンパイアに」
「ちょ、ちょっと待ってよ。バンパイアだとか運命だとか意味わかんないから。それに、バンパイアなんているわけないじゃない」
「可笑しなお方だ。同じバンパイアだというのに信じられないとは」
「いや、だから私はバンパイアじゃ――」
言いかけたその時、突然体が何かに包まれたかと思うと、首筋に痛みが走る。
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