41人が本棚に入れています
本棚に追加
ーーーーー
月日が流れるのは早くて、理央に言えないままライブの当日を迎えた。
輝人くんのライブをまた見れると思うと心が躍るけど、それよりも、理央に輝人くんとのことを言えていないことが、憂鬱で仕方なかった。
ライブを見に行くだけなら、ステージの上の輝人くんを見るだけだと、言わなくてもやり過ごせるんじゃないかと思った私は、輝人くんには楽屋に行かないことを伝えた。
梅田のライブハウスに向かう途中、有名なたこ焼き屋に行ったり、インスタ映えスポットに立ち寄ったりした。
道中何度も言いかけたけど、やっぱり言えないまま、ライブ会場に着いてしまった。
会場前は、色とりどりの髪をした人が沢山いて、私は場違いなんじゃないかって尻込みしてしまう。
でも、集まるファンの人たちの顔を見ていると、みんな一様にキラキラした表情で、期待に満ち溢れた笑顔で楽しそうだ。
それを見ているだけで、みんなsnowdropが大好きなんだって伝わってきて嬉しくなる。
隣にいる理央も同様、目を輝かせて期待に満ちた表情をしている。
いつにも増して、テンションが高い。
みんながひとつの場所に向かっているような、そんな空気感を作り出せるsnowdropはやっぱり凄くて、こんな景色をステージの上から見ているんだと思うと、輝人くんが違う世界の人のように思えて、少し寂しくなった。
ピロン
微かにLINEの通知音が聞こえて、鞄の中から取り出したスマホを確認すると、輝人くんからのメッセージが届いていた。
[舞衣ちゃん!お友達も一緒に楽屋に来たらいいけん、終わったら来てよ]
[今日は終わったら帰るね、楽屋行けなくてごめんね]
輝人くんは演奏に感情が出やすいから、細心の注意を払ってメッセージを送る。
私の一言で、ライブパフォーマンスに影響が出ては、メンバーや楽しみに来ているファンの人たちに申し訳ない。
[明日の夜、ゆっくり会おう 頑張ってね! 大好きだよ]
そうメッセージを送ってLINEを閉じた。
私だって会いたいよ…輝人くん。
最初のコメントを投稿しよう!