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ライブは最高のパフォーマンスで幕を閉じた。
歓声の降り注ぐステージは、きっと神様しか昇れない場所なんだろうと、私には一生手の届かない場所だと感じたけど、スポットライトを浴びて気持ちよさそうにドラムを叩く輝人くんを見ていたら、私も同じように幸せな気持ちになれた。
理央は興奮冷めやらぬ状態で、私の背中をバシバシ叩きながら何やら叫んでいる。
「舞衣ー! snowdropかっこよすぎ! 私、怜くんに惚れた! 最高過ぎたよぉ」
ライブ前、あんなに輝人くんて騒いでいた理央は、いったい何処に行ったんだろう...
あんなにモヤモヤして憂鬱だった私の気持ちを他所に、あっさり怜くんに乗り替えるあたり、理央らしくて笑ってしまう。
でも、今がチャンスなんじゃないかって思った私は、咄嗟に理央の腕を掴んで、もう一度会場の奥を目指した。
「ちょっと、舞衣どうしちゃったの」
はき出されるように出口へと向かう人波をかき分け、逆流する私たちを迷惑そうに見る人たちが怖かったけど、そんなことよりも、今すぐ輝人くんに会いたかった。
関係者以外立ち入り禁止の柵の前まで来て、一度立ち止まって冷静になる。
「ねぇ理央、snowdropの楽屋行きたくない?」
「えっ!? 舞衣なに言ってんの? 訳わかんないんだけど」
「いいから着いてきて」
頭にハテナマークをいっぱい並べた理央を引っ張って、楽屋に連れて行く。
スタッフの人にバックパスを見せて、楽屋へと続く細い廊下を進む。
後ろで理央が何やら言っているけど、構わず進む。
汗とタバコの臭いが入り混じった空間はどうしても好きになれなくて、場違いな雰囲気に気後れするけど、どうしても今、輝人くんに会いたかった。
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