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辿り着いた楽屋は、扉が開け放たれていた。
勢いでここまで来たけど、初めて来る楽屋に緊張してしまう。
そっと覗くと、メンバーがソファーに座り、談笑しているのが見えた。
声を掛けられず立ち尽くしていると、ベースの大翔くんが気付いてくれた。
「あっ! 輝人の彼女さんやん」
その声に目を丸くする理央。
この状況を整理しきれないという風に、目をパチパチさせている。
怜くんも気付いて、入ってきいやと手招きしてくれる。
「えっ!? 舞衣どういうこと」
私は勢いに任せ、輝人くんの隣まで行き、彼氏ですと理央に紹介した。
「えぇぇぇぇーーー!!!」
理央の絶叫にも近い声が、楽屋中に響き渡った。
輝人くんも、私の突然の行動に驚いている。
「舞衣、輝人くんが彼氏ってどんなドッキリよ」
信じていない理央が、ドッキリだと騒ぎ出す。
私が赤髪のバンドマンと付き合うなんて、ありえないと思っていたんだから無理もない。
「ないないない、舞衣が輝人くんととか、絶対ない!」
理央の反応で笑いが起こる。
もちろん、騙されたと思っている理央は怒り出してしまう。
私はこういう時、どうしたらいいのかわからなくて、やっぱりちゃんと伝えるべきだったと後悔してしまう。
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