トマトの神様の隣

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見せられた動画の中では真っ赤な髪を振り乱し、テクニカルに楽しそうにドラムを叩く、よく知った彼が映っていた。 「…す、すごい真っ赤な髪…だね」 「インパクトあるでしょ! それでこの子犬みたいな可愛い顔でパワフルなドラム叩くの最高じゃない!?」 「そっ、そうだね…」 理央は昔から目立つタイプが好きだった。 だからって... 「この人さ、snowdropってバンドのドラマーなんだけど、大阪に住んでるらしくてさ、舞衣会ったことない? 会えたら絶対に連絡先聞いて友達になるんだ」 「あっ、えっと…」 「今度ライブがあったら一緒に行こうよ」 知ってるもなにも、会ったことがあるもなにも、毎日私の隣で笑っていますなんて、言えるはずなかった。 「あっ、舞衣は真面目ちゃんだから、バンドなんか興味ないか…前から舞衣が好きになる男って、無口でなに考えてるかわかんなそうな人だったもんね、こんな赤髪のバンドマンなんか興味ないよね」 「あ、いや、興味ないとか、そんなことは言ってないけど…」 「しかし可愛いよなぁ 輝人くん」 語尾にハートが付いたように呟いて、画面の彼に恋するように、うっとりしている理央の口から、輝人くんの名前が出てドキリとしたけど、私がまさかバンドマンと恋をするなんて想像もしていないだろう。 でも、これでは元彼と別れたことも、ましてや輝人くんが彼氏だなんて言えそうにない。 私とのことを知ったらどうなるだろうと、考えただけで言える気がしなかった。 そんなことをぼんやりと考えているうちに、理央の話はいつの間にか、また次の話題にシフトしていた。
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