トマトの神様の隣

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理央は、数日大阪を満喫して帰って行った。 機関銃のようによく喋って、嵐のような彼女だけど、やっぱり幼なじみって存在はどこか安心する。 流行に敏感でパワフルで、ポジティブな理央からは、会うと元気を貰える。 だから、明日からまた頑張ろうって思えるんだ。 理央が私の部屋に滞在していた三日間、輝人くんとは会えなかった。 思えば付き合い初めてから、ちょっとの時間でも毎日会っていたことに気付く。 だから、たった三日でも、とても長い間会っていなかったような、そんな物足りなさを感じていた。 理央と新大阪駅で別れた後、在来線の車内でLINE画面を開く。 [今日いつものとこで会える?] 輝人くんにメッセージを送る。 ピロン すぐにチープな通知音が鳴り、輝人くんからの返信が届く。 慌ててマナーモードに切り替える。 [今どこ?今すぐ会いたい!] 電車の中なのに、ニヤけてしまうようなメッセージが嬉しい。 [今電車、あと20分くらいで着くよ] [じゃあ迎えにいくから] 大好きな芝犬のスタンプでOKと送る。 彼とのくすぐったいやり取りに幸せを感じる。 ささやかな出来事さえも、色彩ある風景に変えてくれる輝人くんは、私だけのトマトの神様。 真っ赤な髪のバンドマンだけど、髪を振り乱して激しくドラムを叩く人だけど、見た目とは裏腹に素直で、優しくて、甘えん坊で、可愛い人。 彼が駅で待っててくれるのかと思うと嬉しくて、早く帰りたくて、電車の中なのに走り出したい気分になった。
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