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輝人くんはボーカルの怜くんの家に居候している。
だから、二人で会うのはいつも私のマンションか、初めて出会ったコンビニの前。
まだデートというデートはしたことがない。
玄関を開けると、輝人くんが私の背中をグイっと押して、後ろ手に扉を素早く閉めた。
「えっ、なに…どうしたの…」
玄関の扉が閉まるなり、後ろから抱きしめられる。
「三日も会えないとか、キツかったっちゃよ」
私の肩におでこをコツンと乗せ、弱々しく呟く彼。
「どうしたの輝人くん…私も会いたかったよ」
そう言うと、抱きしめる力が強くなった。
同じ気持ちでいてくれたことが嬉しい。
「さっきは嫉妬してくれたと」
「嫉妬って言うか、あんなとこ見ちゃうと、やっぱり住む世界が違うのかなって思っちゃうよ」
「俺は舞衣ちゃんしか見てないとよ」
くるりと向きを変えられ、切なげに見つめられる。
輝人くんの真っ直ぐな眼差しに目を逸らそうとすると、キスが落ちてくる。
意識が朦朧とするくらい気持ちよくて、彼の甘さに溶けそうになる。
「輝人くん、とりあえず部屋に入ろう」
このままずっとと思いながらも、手放しそうになる理性を保ちながら、今度は私が彼の手を取って部屋へと導く。
リビングのソファーまで辿り着くと、我慢仕切れないとばかりに引き寄せられる。
こうやって抱き合っていると、絡み合う温度が、私の熱なのか輝人くんの熱なのかわからなくて、熱さは外気温のせいかも知れないのに、溶け合う二人の熱が一つになっていくのが気持ちよくて、いつまでもこうしていたいと思った。
こんな幸せな時間をくれる輝人くんを手放したくなくて、熱を求めて彼の身体に腕を回した。
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