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改めて自分の身の上を振り返ると、泣けてくるわ。ううう。
「ユエ、泣かないで? そこまで追い詰めるつもりはなかったんだ」
いつの間にかリアルに涙を浮かべていた私は、アニエスさんを気遣わせてしまっていたようです。
「ごめんなさい! 違うんてす。アニエスさんのせいじゃありません。ちょっと自分が情けなくなってきて……」
「そんなことないよ。とにかく、落ち込むユエに朗報だよ!」
「何ですか?」
アニエスさんが、こちらを見つめている。なんとなく、弓をつがえて構えた猟師みたいな目。
「僕と一緒に森へ入ろうか?」
私は顔が沸騰するのを感じました。
この世界において、『森へ入ろう』という言葉は口説き文句の一つです。意中の人と二人きりになりたいという意味ですね。さらに、『森へ入っても君のことは守ってあげる』ということでもあります。森って、基本的に魔物がいますからね。
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