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結局考えはまとまらず、洗面所を出た。
母と弟が話しているのが聞こえる。
足を止めて、その言葉たちに耳を傾ける。
…平穏…なのか。平穏、とは言わない、が。
落ち着いて話している。
自分はどうすればいいのか。
どうしてほしいのか。
じゃあこうするからそっちもこうしてね。
きっとそんな風に話しているのだろう。
…前にも同じことがあったような気がする。
もう何も思い出せないが、初めてではないことは分かる。
私は台所の方からリビングに入る。
すぐ前に見える食卓で父が本を読んでいる。
「お風呂入れるよ~」
何も無い風に装って言う。
父は少し私を見て、また本に目を落とした。
私は話し合う母とお弟の方を見ないようにしてお茶を飲む。
足音にも気をつけながら部屋を出る。
廊下でもひっそり歩き、自分の部屋に入る。
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