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「えー……、と。バイトが終わって」
「おう」
「その、バイトなんだけど。片づけ手伝ってたら、ちょっと思ってたより上がりが遅くなって」
「……おう」
「終電なくなったから歩いて帰ろうと思ってたんだけど、声かけられて」
男の人ふたりだったんだけど、ホテルの場所がわからないって言ってて。こんな遅い時間まで迷ってるなんて大変だなと思ったんだけど、道案内してほしいって言われても俺もよくわかんないしな、って困ってたら、一基さんが車から声かけてくれて。
思い返しながらつらつらと喋っていると、昂輝が「一基さんが?」と眉を寄せた。
「うん。なんか困ってるふうに見えたのかも。優しいんだな」
「優しい……」
困惑に満ちた声を不思議に思いながらも、説明を続ける。
「うん。それで、まぁ、結局、道案内は俺がしなくても解決したみたいで、気づいたらふたりともいなくなってたんだけど。一基さんが歩いて帰るつもりだったんなら、心配だし送っていってあげるって言ってくれて」
「はぁ」
「申し訳ないし断るつもりだったんだけど、あれよあれよとそういう流れになっちゃって。そうしたら、ついでに、ごはんまだなんだったら、付き合ってよ、一人飯も寂しいし、みたいな話になって。それで……」
険しくなっていくふたりの表情に、はたと浅海は口を閉ざした。図々しいと思われたに違いない。
そもそもとして、彼は自分の知り合いではなく昂輝の知り合いなのだ。
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