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「昂輝!」  驚いた顔で振り向いた昂輝の腕を取り、区切るように言い募る。 「昂輝。違う。俺の、せいだ。俺が、悪い」 「なに言って……」 「俺が悪い」 「あんたのせいなわけないだろ!」  思わずといったふうに激高した直後、昂輝は口を閉ざした。眉をひそめたまま八瀬から手を放し、小さく息を吐く。  次に響いたのは、感情を抑え直した静かな声だった。 「大きな声出して、ごめん。でも」 「違う」  昂輝がこんなふうに謝るなんて、今度はどんな反応をしてしまったのか。みっともないと呆れながら、浅海は繰り返した。  この人のせいではないのだから、正しく示さないといけない。  覚悟を決め、ゆっくりと視線を動かす。昂輝になにを言われても、反論のひとつもせず、静かに立っていた人に。 「ごめんなさい、一基さん。迷惑、かけて」  いつもどおりの微笑を、少なくとも浅海は浮かべたつもりだった。昂輝の腕を握ったまま、言葉を続ける。 「俺がわかってなかったから。あなたも昂輝も言ってくれてたのに、俺が……」  声がかすれそうになって、一度言葉を切る。八瀬はなにも言わなかった。いつもの優しい空気はなく、ただ静かに自分を見ている。その瞳に向かって、浅海は言い切った。
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