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「浅海くんさえよかったらなんだけどさ、俺の家でバイトする気ない?」
いささか唐突に切り出された提案に、浅海は食事の手を止めて瞳を瞬かせた。
「え……っと、バイト、ですか?」
「そう。バイト。無理にとは言わないけど、よかったら。週に一回くらいでいいから、家の片づけとかしてくれると、すごく助かるんだよね」
と言うわりには、静かな圧力を感じるような。その圧から逃れるようにして、モデルルームのような室内を一瞥する。
なんでも言ってくださいとは、たしかに言った。自分にできることなら力になりたいと思ったのも本当ではある。……あるのだけれど。
――掃除が必要な部屋には見えないけどなぁ。
それに、自分はただの高校生だ。プロのハウスキーパーを雇うというのなら、話はまた違うのだろうが。
視線を向け直すと、八瀬がにこりとほほえんだ。
「どうかな」
「えっと、……でも、それ、本当に俺でいいんですか?」
とてもいいとは思えなかったから尋ねたのだが、八瀬は変わらなかった。
「もちろん」
頼られたり頼まれたりすると、どうにも断れない性分であることをよくよく理解している浅海は、葛藤の末に頷いた。
どうしてこんな話になったんだろうなぁ、と内心で首をひねりながら。
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