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「うん、おいしいよ」
その言葉に、「よかった」と浅海は胸を撫で下ろした。
なにがいいとかありますか、とメッセージアプリで聞いたときも、浅海くんのいつもどおりでいいよ、という答えのみだったので、ものすごく悩んでしまったのだ。
そもそものきっかけが「外食は味気ない」という会話だったのだから、家庭的なものがいいのかなと考えてはみたのだが。
自分の料理の腕前なんてたかが知れているわけで。
「なにがいいのかなって悩んでたら、よくわかんなくなってきて。家庭的な味ってなにかなって妹に聞いてみたんですけど」
「へぇ、妹さん?」
「そう。今、中三なんですけど。そうしたら、やっぱり一汁三菜がいいんじゃないかって。あとメインは肉じゃがだって」
「それはまた随分と古風だね」
「なんか、古い漫画ばっかり読んでるんですよね。最近の少女漫画じゃなくて」
だから、ちょっとずれているのかもしれない、と思い至ったのは、八瀬が笑っている気がしたからだ。
……そういえば、侑平にも微妙な顔されたんだっけ。
結局どうするつもりなんだ、と確認されたときである。おまえはなにを落としに行くつもりなんだ、とかなんとか。
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