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「で、どうなんだ、貯まりそうなのか。一人暮らししたいんだろ」
「なんとか。奨学金狙いでいくつもりだけど、学費分もみておきたいし」
「ま、がんばれよ」
「うん」
八瀬もだが、風見も必要以上に深入りしてこないから気が楽だ。ふたりとも似た年齢だったはずだけれど、年上というものは皆こんなふうなのだろうか。
――七年、八年か。
それだけの時間が流れて、今の八瀬や風見と同じ年になったとき、自分はまともな大人になっているのだろうか。なりたいと思うけれど、なれるとも思えなかった。
「高校卒業したらバーテンやるか? 給料上げてやれるぞ」
「んー……、裏方のほうが楽でいいな」
「楽じゃねぇから給料弾むんだろうが」
「それもそうか。でもいいや。ありがと」
「……おまえも難儀というか、面倒なやつだよな。頑固っつうか」
「え?」
「その顔利用すれば、もっと簡単にいくらでも稼げるだろって言ってんの。ま、うちは助かってるからいいんだけどな」
取りなすように続いた言葉に、浅海は「うん」と頷いた。
風見の言うとおりだ。面倒で頑固なことをしているのだと思う。でも、どうしてもうまく割り切れない。
水商売は嫌だとか、そういうことではなくて。ただ単純に。
――嫌いだ、こんな顔。
きれいだなんて言われても、なにひとつうれしくない。
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