プロローグ

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 その言葉に背後を振り返った子どもが、「本当だ」とまた目を瞬かせる。「大丈夫かな、場所がわかったんならいいけど」 「そうじゃないかな。ところで浅海くん。ついでだから送ろうか?」 「え……? いや、いいですよ。帰れますし」 「家、このあたりなの?」 「昂輝の家の近くと言えば近くです。ここからも歩いて帰れますし。たいした時間もかかりませんから。でも、ありがとうございます」  坊ちゃんの家の近くって、小一時間はかかるだろ。  半ば本気で呆れながら、八瀬は改めて子どもに目を向けた。制服の白いシャツからのぞくほっそりとした腕が妙になまめかしい。  ――そこまで女顔ってわけでもないんだけどな。  だからと言って、男らしい顔立ちというわけでもないが。性別を感じさせない造作は、きれいに整っていて人目を惹く。少年らしさを残した身体つきと相まって、なんともいえない色香があった。  これは需要があるだろうな、と総評を下す。坊ちゃんのお友達なのが惜しいくらいだ。  信号はとうに青に変わっていたが、恐れをなしたらしい後続車はクラクションを鳴らしもしない。  貸し一だな。八瀬はこどもに向かってほほえんだ。
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