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「こんなところでバイトしてるわりに、遊んでないんだね」 「え」  そう言われて、この人に声をかけられた夜を思い出した。夜遊び中だったのかとからかわれたことも。  もやもやとしていた気持ちなんて、一瞬で吹き飛んでしまった。 「えっと、あの、違うんです」  彼はそんなことはどうでもいいだろうし、興味もないだろう。わかっていたのに、言葉が止まらなかった。 「あ、あの、その、裏方というか、そっちばっかりで、接客とかはぜんぜん。その……、裏方も、店長が知り合いの人で、それで入れてもらってるだけで」  言い募っているうちに、どんどん声が小さくなっていく。そんなつもりはなかったはずなのに、あまりにも言い訳めいていたからだ。 「あの、……すみません」 「俺に謝る必要はないけど。まぁ、補導されないように気をつけてね。夏休みになったら増えるでしょ」 「……はい、それは、その、……気をつけます」 「じゃあね」  あっさりと踵を返した彼に、こくこくと無言のまま頷く。  いまさらになってから、ものすごく心臓がうるさい気がしていた。暑い。たぶん、気温のせいだけではなく。 「あ、浅海くん」  ふと思い出したように八瀬が振り返った。その顔にいたずらな笑みが浮かぶ。 「その顔、もうちょっとどうにかしてから戻ったほうがいいかもよ」 「え?」 「いたずらしたくなる顔してる」 「え」  固まった浅海に、それ以上構うことなく八瀬は立ち去っていった。その背中を見送って、ずるずるとその場に座り込む。  ――人を子どもだと思って、からかいすぎだろ。    そんなふうに思ってみたところで、顔がほてっている事実はごまかせなかった。めちゃくちゃ恥ずかしい。  ものすごく過剰な反応をしてしまった気がする。 「やばい……、めちゃくちゃ恥ずかしい……」  早く帰りたかったはずなのに。とてもではないが、今は戻れそうになかった。
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