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誰かに頼られたときにうまく断れないのは、昔からだ。どんなことであっても、自分にできることならいいかなと思ってしまう。
そんなふうだから、「なんでもかんでもほいほい引き受けるな」と幼馴染みに苦い顔をされた回数は数え切れない。
風見にも呆れたように「本当に断らないな」と何度も笑われた。
今回の達昭の件に関しても、そうだ。風見が知れば、弟を窘めてはくれるだろうが、自分にも「嫌なことは断れ」と言うにちがいない。
わかっている。
――けど、それにしても、グサッときたのな、今のは。
自分の偽善を見抜かれたように思うからなのだろうか。よりにもよって、この人に、と、そう。
でも、それってめちゃくちゃかっこわるい。
「ごめんね、説教くさくて」
「あ、いえ……、ありがとう、ございます」
自分が無言だったことに気がついて、慌ててぺこりと頭を下げる。そんなふうに言ってもらえるのはありがたいことだ。わかっている。
説教くさいなんて思ってもいない。ただ。
「わかってはいるんです」
ぽつりとこぼれた言い訳のようなそれに、前を向いていた八瀬の視線が動いた。必要以上に責めるでも、そうかといって慰めるでもない静かな瞳。
気恥ずかしくなって、浅海は小さく笑った。誤魔化すように。
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