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「性格悪……」  まぁ、自分の性格がいいだなんて、思ったこともないけれど。  ただ外面がいいというだけなのだ。その上っ面で「いい子」と評されることはあっても、中身はなにも伴っていない。そのことは、自分が一番よくわかっている。 「性格悪いって、俺のこと?」  ひとりごとのつもりだったのに返事があって、ばっと勢いよく顔を上げる。 「……一基さん」  ぎょっとした反応にか、八瀬は小さく笑っている。近づいてくる彼をぼうっと見つめていたことに気づいて、慌てて浅海は否定に走った。 「あの、違くて。その、俺のことというか」 「そうなの?」  気分を害した様子はいっさいなくて、どちらかと言えばおもしろがっているくらいの雰囲気ではあった。けれど、そういう問題ではなく居たたまれない。 「そうなんです。その、……すみません」 「謝らなくていいけど。というか、まぁ、浅海くん自己肯定感低そうだもんな」 「自己肯定感ですか?」  聞き返すと、目の前で立ち止まった八瀬が「うん」とあっさりと頷いた。 「自尊心とはまたちょっと違うというか。そうだな、ちょっとそのまま顔上げてな」 「え……?」  戸惑っているうちに、伸びてきた長い指が顎を持ち上げる。いつもの隙のないスーツ姿とは違うラフな雰囲気が、年齢差を縮めたように感じさせていて、どきりとした。  そんなわけがないのに、そう自分と変わらないように思えてしまったのだ。 「浅海くん、前にさ、俺に恋愛する気がないって言ったことあるでしょ。その理由のひとつはこれかなって思ってたんだけど、合ってる?」 「……合って、ます」  なにもかも見透かされているみたいな瞳を前にすると、誤魔化すことも嘘を吐くこともできなかった。
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