3/9

499人が本棚に入れています
本棚に追加
/101ページ
「それで、どうしたの?」  侑平の言うとおり屋上で待っていてくれたら、すぐに顔を出したのに。わざわざ呼びにくるなんて、急ぎの用事でもあったのだろうか。 「ちょっと、早く聞きたいことがあって」 「聞きたいこと?」 「やっぱり、その、……屋上行ってからでいいです」  言い淀まれて首を傾げた浅海と反対に、侑平は呆れたようにぼやいている。 「だから素直に上で待っときゃよかったのに」 「うるせぇな」 「おまえな、佐合。もうちょっと浅海に対するみたいな口の利き方できねぇの? 俺も先輩なんだけど」 「なんであんたに敬語使わなきゃならないんだ」 「仲良いな」  歩きながらもずっとやり合っているふたりを見ているうちに、そんな感想が口をついた。知り合った当初のギスギスしていた雰囲気を思えば、かわいい兄弟げんかにしか見えない。 「仲良くはないです」 「仲良くはない」 「ほら」  重なった返答を指摘すると、今度はふたり揃って黙り込む。昂輝はきらいな人間とは付き合わないし、侑平にしても本当に嫌だったら構わないだろうから、つまり、そういうことでしかない。
/101ページ

最初のコメントを投稿しよう!

499人が本棚に入れています
本棚に追加