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「それで、どうしたの?」
侑平の言うとおり屋上で待っていてくれたら、すぐに顔を出したのに。わざわざ呼びにくるなんて、急ぎの用事でもあったのだろうか。
「ちょっと、早く聞きたいことがあって」
「聞きたいこと?」
「やっぱり、その、……屋上行ってからでいいです」
言い淀まれて首を傾げた浅海と反対に、侑平は呆れたようにぼやいている。
「だから素直に上で待っときゃよかったのに」
「うるせぇな」
「おまえな、佐合。もうちょっと浅海に対するみたいな口の利き方できねぇの? 俺も先輩なんだけど」
「なんであんたに敬語使わなきゃならないんだ」
「仲良いな」
歩きながらもずっとやり合っているふたりを見ているうちに、そんな感想が口をついた。知り合った当初のギスギスしていた雰囲気を思えば、かわいい兄弟げんかにしか見えない。
「仲良くはないです」
「仲良くはない」
「ほら」
重なった返答を指摘すると、今度はふたり揃って黙り込む。昂輝はきらいな人間とは付き合わないし、侑平にしても本当に嫌だったら構わないだろうから、つまり、そういうことでしかない。
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