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「……な、に……」  混乱した声が勝手にこぼれた。だが、それだけで、動くことは叶わない。せめてと天井に顔を背けた瞬間、浅海は今度こそ息を詰めた。天井にも隠し撮りに使うようなカメラがある。  いったい、なんだ、これは。ドクドクと心臓がうるさい音を立て始める。おまえ、顔だけは良いんだから。呆れたように、何度も幼馴染みが言っていた台詞。  世の中、男でもいいって言う人間もいるんだから、気をつけろよ。聞き流していた忠告が、急速に現実味を帯びる。 「く、そ……!」  今までとは違う種類の恐怖に、我武者羅に腕を引く。鎖を通された柵がぎしりと軋んだものの、折れる気配はない。代わりに生ぬるい感触が手首を伝い、皮膚が擦り切れたことを知った。  窓はあるが、遠く、外の様子も伺うことはできない。焦燥のままにガチャガチャと腕を動かしていると、部屋のドアが開いた。 「あんまり暴れると、ひどいことになるぞ? まぁ、それはそれで面白そうだけどな」  入ってきたのは、まったく知らない男だった。自ずと身体に力が入り、また頭上で鎖が鳴る。
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