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「つまり、運が悪かったってことだ」
理解が、できなかった。なにがどうなっているのか。自分がなにをされようとしているのか。
ボタンを外すことすら面倒だったのか、シャツを乱雑に剥かれ、布地が裂ける音がした。
「なに、……やめ、――やめろ!」
外れないとわかっていても、勝手に手が動く。生じた派手な金属音に、なぜか男は笑った。
「いいな。もっと叫べよ。そのほうが映える」
――映える?
遅れて意味を悟り、浅海は声を呑んだ。撮られている。これを。
「おい、おい。叫んでいいって言ってるだろ?」
男の手が右肩に触れる。みし、と音がしそうな圧迫感に身体に力が入った。男は変わらない。笑っている。怖い。――怖い。
「っ――――!」
燃えるような痛みを必死で唇を噛んで耐える。額には脂汗がにじんでいる気がした。
息を殺し、肩から離れた指先の行方を追う。次になにをされるか、見当がつかなかったからだ。
「なんだ。もっと泣き叫ぶかと思ったのに。つまんねぇなぁ」
見下ろしてくる男は、言葉どおりの白けた顔をしていた。
熱い。痛い。熱い。ズキンズキンと鈍痛が肩から腕に広がっていく感覚。脱臼させられたのだろうかと思ったが、はっきりとはわからなかった。
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