509人が本棚に入れています
本棚に追加
ここで「大丈夫」と繰り返すのは、まずいんだろうな。ようやく回り始めた頭で、納得してくれそうな台詞を選ぶ。
「さすがに病院行くつもりはあるから。だから、大丈夫」
「……本当ですか、それ」
「本当、本当」
疑惑と心配と苛立ち。そういった感情を抑えただろう淡々とした声が、やはりどうにも申し訳なくて、浅海はもう一度笑った。
「余計なこと言われても面倒だし、自分で嵌めれたらよかったんだけど。ちょっと難しいから」
「浅海さん」
「だから、本当に大丈夫。ちゃんと行くから。昂輝もあんまり遅くならないうちに」
「聞かないから!」
必死な声に遮られ、小さく瞬く。余計な心配なんてさせたくなかったのに。おずおずとした調子で浅海の左手を取った昂輝が、そっと息を吐いた。
「浅海さんが言いたくないなら聞かないから。だから、病院、俺に連れて行かせて」
「昂輝」
「俺が知ってるところだったら、警察にも家にも連絡させないし、余計な診療もさせない」
だから、と言い募られ、思わず目を伏せる。家に連絡が入らないことはありがたいけれど、昂輝を巻き込みたくなかったのだ。
最初のコメントを投稿しよう!