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博士は百年後の未来を予測していた。研究を成功させ、世界に時代の変化を認めさせる為に法律を破る必要があったのだ、証拠を隠滅するプログラムまで用意して。
研究の動機はたぶん愛。いつの日にか帰る恋人に会いたかったから。ただひとつ、彼女の計画に綻びを生じさせたのも愛だろう。彼女はクローンに、僕に似た恋人の記憶も移植していた。
僕を生かす為に、彼女のクローンは宇宙空間へと身を躍らせたに違いなかった。当時のクローンは物にすぎなかったのだから。
僕は名も知らぬクローンと科学者の為に涙した。
僕に怪訝な視線を向けるアンドロイドに、緊急通信が入った。
「どうしたんだい?」
「行政官からです。検査中の貴方の船に、Yシャツを着た女性の遺体が引っかかっていたと――」
「わかった! すぐに地球ポートへ引き返してくれ!」
僕はこれから訪れるであろう素晴らしき未来を先読みし、アンドロイドに指示していた。
〈了〉
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