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 僕は生命維持装置に横たえられたまま、地球を周回する巨大な宇宙ステーション、地球圏ポートへと収容された。  地球圏ポートの人工重力は僕の船よりも強力だった。血圧の低下が著しい、再び眩暈が襲ってくる。それでも救助隊員に言わせると、地球の八割程しかないという。  地球圏ポートで僕は船と共に遭難者専用の隔離施設に収容され、検疫と健康診断が行われた。そのあいだ六時間程だろうか、僕の記憶も徐々に蘇っていた。  看護師の女性が、てきぱきと僕の体に器具を装着し検査を進めてゆく。 「今は何年何月何日何曜かわかりますか?」  僕は船がポートを出発した日をはっきりと覚えている。それは宇宙飛行士にとって重要な情報だからだ。 「たしか、西暦二千二百二十年五月二十二日だった。それからどれ程経ったかわからないけど、地球圏ポート出航はその日に間違いない」  杓子定規な受け答えをする看護師は、黙々と僕の記録を薄っぺらい端末に入力してゆく。なんとも愛想のない女だ。
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