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 通常の荷物ではないから、積荷の説明や税関の手続き書類もありはしない。ポットは素っ気無い業務用冷凍睡眠装置だ。生命維持装置の機関部とエネルギーパック以外は透明なガラスになっている。病人の輸送なら許可される筈だ、密航する必要などない。研究が星の基幹産業である地球で必要あるとしたら、それは法律で禁じられている不法な実験材料――まさかな。    中身はガラスが曇ってよく見えない。 「どうせ人間なんだろ?」  僕は好奇心に駆られ、ポットの除霜機能を作動させた。収容者の状態を目視する為の機能だ。みるみるガラスに付いた白い霜が消えてゆく。そこから現れた人物の姿に、僕は目を見張り釘付けになった。  ポットの中身は、若く美しい裸の女だった。
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