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Ⅰ
「おい! 蘇生したぞ!」
男が耳元で大声を張り上げている。
不愉快な目覚めに僕は、まぶたを押し開け眼球を覗き込む男を力いっぱい押し戻した。
「まだ混乱しているようだな」
近付いて来たもうひとりの男が、手にした器具で僕の血管内に薬剤を注入すると、僕の意識は一瞬飛び、次の瞬間から心静かに呼吸のことだけを考えはじめていた。心臓の鼓動が力強くなってゆく。
薄暗い室内照明のオレンジ色を掻き消すように、男の服の一部から放たれる眩い光に目が眩む。恐怖にもがく僕を四本の腕が押さえつけ、低く落ち着いた声が、「落ち着いて。ゆっくりと意識を取り戻すんだ」と言った。
ここは船室だ。貨物室の中だ。少しずつ記憶が蘇ってくる。白い壁には見覚えがある。ここは、僕が乗っていた宇宙船の貨物室の中に違いない。
僕の体から力が抜けたことを確認すると、男が「我々は地球所属の救助隊だ。大丈夫、君は助かったんだよ」と言った。
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