大団円という名の後始末

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 白髪頭のロマンスグレーである侍従長を筆頭に、深々と挨拶をする侍女達。 「世界樹のクチキ様とドライアドのアディ様でよろしいですかな」 オレがそうだと応えると、侍従長と2人の侍女がオレの前に立ち、部屋を移動するように頭を下げた。 「申し訳ありません世界樹様、本来ならドライアド様に部屋を移っていただくのですが、カーキ=ツバタでは女性優先ですので……」 まあ、アディの着替えを見ているのも何だからな。 オレは快く立ち上がり部屋を出ていくことにした。  侍従長についていくオレと、その後に侍女ふたりが続く。  残ったふたりの侍女が、手に持った衣装をテーブルの上に置くのを横目にオレ達は部屋を出ていく。そのまま隣の部屋に入ると、そこにはモーリとゾフィ隊長が居た。 「モーリ、無事だったか。ゾフィ隊長も」 「お陰さまで。この子に話を伝えたあと店に行こうとしたんですが、止められましてずっと王宮にいました」 「立場を考えてください、特別扱いはできないんですから」  前から気になっていたが、このふたりは何か関係があるのかな。  オレのそんな雰囲気を感じ取ったのか、モーリが話してくれた。 「紹介が遅れました。クッキーさん、うちの娘です」 モーリはそう言いながらゾフィ隊長を紹介した。 「まったく、話を聞いた時も驚いたし、謁見の間で顔を見た時も愕然としたわよ。昔から揉め事ばかり持ち帰るのだから」 「すまないね」 「いえいえ、世界樹様のことを言っているのではありませぬ。父は昔から揉め事請負人(トラブルメーカー)でして、それで何度も王宮に呼びつけられては私が迎えに行ってたんです」 「おかげで覚えがめでたくて、親衛隊に入隊したうえ、王女様の教育係となり、今では隊長になってしまいました」 それはスゴいなとオレは思った。同時にモーリがやたら信頼しているなという(バグ)も無くなってスッキリもした。 「失礼します。隊長、お母様が御呼びです」 「こら、アンナ、お母様ではなく女王様と呼びなさい」 「ごめんなさい、さっきまで話していたから……」 部屋に入ってきて、ゾフィ隊長に話しかけた女騎士は、会話から察するに先ほど話しに出た王女なんだろう。  王女が親衛隊の騎士って、どういうことなんだ? その事を側にいる侍従長に訊ねると、 「カーキ=ツバタの女王は、女神フレイヤ様との契約をしなくてはならないので、いちどバルキリーに憑依されるという事をしなければならないのです。言わば女王になるための通過儀礼です」 となると、あの子が時期女王となるのか。 目線を向けると、それに気がついたのか、こちらを見て挨拶をした。 「こんにちは、世界樹様。あの時はお世話になりました」 あの時って、どの時だ? と思って顔をじっと見て思い出した。 このコ、ゾフィ隊長と共に、オレをカイマにぶん投げたコじゃないか。
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