第14話 お祝い

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 日本にもあった、プラネタリウムの投影機によく似ている。ヘレナの作品は、あれに負けず劣らずのリアルな星空を再現していた。  品評会の傾向として、日常生活の利便性が高そうな作品の方が評価されやすいため、惜しくも大賞は逃してしまったのだが、魔道具の見学に来た客の人気はダントツだったように思う。 「私も、素晴らしい才能だと思うわ~」 「ウリエル様……」  ウリエルの称賛に、ヘレナがちょっと恐縮しながらも照れたように頭の後ろを掻いた。  そんな彼女に微笑みながら、ウリエルは話を続ける。 「ねえ、ヘレンさん。この家、凄いと思わない?」 「はい、それはもう……」  ヘレナは今いる食堂を見回して、同意した。  そういえば彼女は、この屋敷に来た時、置いてある調度品にしきりに驚いていた気がする。 「これね、全部彼が造ったのよ~」  え、マジで? 「そうなんですか!?」  ヘレナが驚愕の声を上げた後、こっちにキラキラとした眼差しを向けてきた。  やめて、そんな目で見ないで。  カリーナも「流石は師匠です」みたいな顔しないで。  俺もどんな仕組みなのか全然分かってないから、何か聞かれても何も答えられないし。 「ええ、あのお風呂とかも凄かったでしょう?」 「はい! あれは、びっくりしました」  そんなにあのお風呂が気に入ったのか、ヘレナが力強く頷いて同意する。  だがあれは料理と同じで、ゲームのメニュー画面にある項目から増設を選んで造っただけなのだ。  俺はただボタンを押しただけで、あれがどんな原理で造られているのかまでは知らない。 「もしよかったら、ヘレナさんも彼に弟子入りしてみない?」 「い、いいんですか? そりゃ私も、入門できるならしたいけど……」  ウリエルの提案に、ヘレナが前向きな言葉を返した。  もしかしたら、お祭りの初日に俺がアデルであることをバラしたのは、俺のことをアピールしてヘレナに弟子入りしたいと思わせるためだったのかもしれない。  だが本当に弟子入りされても何も教えられないので、俺は慌ててウリエルに抗議した。 「おい、勝手に決めるなよ」 「そうですよね、こういうのは、ちゃんと自分で頼まないと」  いや、そうじゃないから。 「お願いします、私を弟子にして下さい」  そう言って、真摯に頭を下げてくるヘレナ。
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