第14話 お祝い

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 そんな彼女と俺の様子を、心配そうに固唾を呑んで見守るカリーナ。  俺が断らないと思っているのか、満足そうにニコニコしているウリエル。  無表情でジーっと俺を見てくるエミリア。  ここで断ると気まずいことになりそうな空気に負け、俺は思わず頷いてしまった。 「い、いいだろう……」 「やったー! ありがとうございます!」  ヘレナが、無邪気に喜びの声を上げる。  かなり後悔したが、ふと彼女が造ったプラネタリウムもどきを思い出して、魔道具の仕組みではなく発想の部分なら何か役に立てるかもしれないと思った。  頼む、活躍してくれ俺の現代知識。  内政とか農業みたいに専門知識が必要そうなのは無理でも、何かあるはずだ。  今は特に何も思いつかないけど。 「おめでとう、ヘレナ。よかったですわ」  悩める俺は裏腹に、カリーナはとても嬉しそうにしていた。  エミリアはジッと意味ありげな視線をヘレナに向けており……それに気がついた彼女が、声を掛ける。 「エミリア、どうかした?」 「なんでもない。私は明日が終わってからにする」 「……?」  エミリアの答えに、ヘレナが疑問符を浮かべる。  とそこで、ウリエルが何気ない様子でヘレナの腰のあたりを指差した。 「ところでヘレナさん、その腰の袋に入ってる魔道具なんだけど……」 「はい、【常夏の宝珠】のことですか?」 「ヘレナ、名前が変わってる」 「【常闇の宝珠】じゃありませんの?」  その時、ウリエルの目がキランッと光った気がした。  心なしか、ちょっと得意気にしているような感じがする。 「ちょっと見せてもらってもいいかしら?」 「ええ、どうぞー」  軽い調子でヘレナが、大きな黒色の宝珠を袋から取り出て、手渡そうとする。  ウリエルはそれに、どうしてか戸惑ったような素振りを見せた。 「……あれ? そんなにあっさり?」 「えっ? どうかされました?」 「ううん、なんでもないわ」  ウリエルは首を横に振ると、ヘレナから【常闇の宝珠】を受け取る。  彼女はそれをじっとりと観察した後、ふと首を傾げた。 「…………これは、何の魔道具なのかしら?」 「擦ると、黒い煙みたいなのが出てくるんです。私が品評会に出す予定だった作品に使えるかなって思ったんですけど、いまいち役に立たなくて……」 「だからヘレナ、それ騙されてる」
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